2017年12月17日日曜日

四国大学事件 看護学部女性准教授、長時間労働でうつ病発症 四国大側に賠償命令 NHK、産経新聞社ほか



徳島市にある四国大学の女性の准教授が「うつ病を発症したのは職場での長時間労働などが原因だ」として大学に2100万円余りの損害賠償を求めていた裁判で、徳島地方裁判所は「准教授の心身の健康を損なわないようにするための措置が取られていなかった」などとして大学側におよそ1400万円を支払うよう命じました。


この裁判は、四国大学看護学部の47歳の女性の准教授が「自分がうつ病を発症したのは、長時間の勤務を強いられたことや職場での人間関係によるストレスが原因だ」などとして大学を相手取り2100万円余りの損害賠償を求めているものです。

大学側は、「准教授の業務は格別多いわけではなく、働く時間についても自らの裁量でコントロールすることができた」などと主張して争っていました。

判決で徳島地方裁判所の川畑公美裁判長は「過重な業務によって早朝から深夜までに及ぶ長時間労働が常態化し、准教授に相当な疲労の蓄積を生じさせていた」と指摘しました。
その上で「心身の健康を損なわないようにするための措置が取られない中で准教授がうつ病を発症したのは、大学が安全に配慮する義務に違反していたことによって生じた」などとして准教授の主張の多くを認め、大学に対し、うつ病による休職で得られなかった分の給与などあわせておよそ1400万円を支払うよう命じました。

判決について准教授側の弁護士は「准教授には責任の重い多くの仕事があり、勤務時間について大学として無関心でよいわけではなく、配慮する義務があることが認められたのは重要だ」と話しています。
一方、四国大学は「判決文を見ていないのでコメントは差し控えたい」としています。

NHK
http://www3.nhk.or.jp/lnews/tokushima/20171213/8020000852.html

長時間労働が原因でうつ病を発症したとして、四国大(徳島市)の看護学部に勤める女性准教授(47)が大学側に計約2145万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、徳島地裁は13日、計約1395万円の支払いを命じた。
 川畑公美裁判長は判決理由で「准教授が過度の疲労や心理的負荷を蓄積して、心身の健康を損なう状況にあることは予見できた」と指摘。うつ病は、大学を設置する学校法人の安全配慮義務違反によって発症したと認めた。
 判決によると、准教授は平成21年度、講義や研究、複数の学内委員のほか、開設直後の学部の実習準備や入試などの業務で恒常的に長時間労働をしていた。准教授は22年3月にうつ状態と診断され、25年6月に徳島労働基準監督署に過重労働による労災と認定された。現在休職している。
 四国大は「判決文を見ていないのでコメントを控える」としている。

判決報道1産経http://www.sankei.com/west/news/171213/wst1712130093-n1.html

長時間労働や人間関係のストレスが原因でうつ病を発症したとして、四国大学看護学部准教授の女性(47)=休職中=が、大学に2145万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が13日、徳島地裁であった。川畑公美裁判長は大学の安全配慮義務違反を認め、休職中の給与や慰謝料など計1395万円の支払いを命じた。
 判決によると、女性は2008年4月に講師に採用され、09年度新設の看護学部の業務などを担当。早朝から深夜の勤務が常態化し、不眠などの症状が出て10年3月、うつ状態と診断された。仕事を休んだり復帰したりする状態になり、13年6月に徳島労働基準監督署に労災認定された。認定では時間外労働が175時間を超えた月もあった。
 判決では、大学側は「業務量を適切に調整するための措置を講じなかった」と判断した。また12年3月、理事長が女性に対し、自己都合による休職願いか、職務を全うできるという内容の診断書のどちらかを提出するよう求め、できなければ退職するよう迫った。このことも女性に強い精神的負担を与え、安全配慮義務違反に当たると指摘した。
 女性の代理人の弁護士は判決について、「裁量労働の大学教員でも、本人の裁量が限られていたケース。教員の健康に対して大学の義務を認めたことは大きい」と評価した。大学側は「判決文を見ていないのでコメントできない」としている。
判決報道2 朝日新聞http://www.asahi.com/articles/ASKDG3TS5KDGUBQU00P.html?iref=pc_extlink

2017年9月7日木曜日

常葉大学事件 地位保全から延べ10名以上の裁判官が関わり高裁で解雇無効、判決文公刊されました・判例ジャーナル各誌(旬報社刊)






リンク:判例雑誌https://www.roudou-kk.co.jp/books/jlc/4974/
リンク:判例雑誌2http://www.junposha.com/catalog/product_info.php/products_id/1193



労働事件簿:雑誌「常葉学園事件」第1294回 (前半) 

―公益通報の真実相当性はどこまで求められるのか 
文・西澤美和子(弁護士) 

1 はじめに
Mさんにとうとう懲戒解雇通知が出ました。」との連絡が東京の宋昌錫弁護士から当事務所に入ったのは,平成27年2月のことでした。恐れていた事態が現実になってしまったのです。Mさんが懲戒解雇されるに至る経緯をお話するには,平成21年まで遡らなければなりません。Mさんは,まさに,十年戦争といえる過酷な道を辿ってきたのです。
 Mさんは,学校法人常葉大学(旧常葉学園。以下「学園」)が運営する常葉大学短期大学部(以下「短大」)の准教授である40代の男性です。学園は,静岡県内で幼稚園から大学院までを広く経営しており,県内では最大規模の名の知れた学校法人です。
 冒頭の懲戒解雇通知が出るまでの間は,宋弁護士が代理人に就き,懲戒手続きにおける弁明等をサポートされていました。当事務所でも相談を受けていたのですが,懲戒解雇通知が交付されたことで,いよいよ法的手段が必要となり,静岡の弁護士も代理人に加わることになりました。弁護団は,宋先生に加え,西ヶ谷知成弁護士,白山聖浩弁護士,私の4名です。
  本件は,事案が非常に複雑ですので,4つのキーとなる出来事,「①補助金問題,②平成22年6月の強要行為,③平成24年8月の刑事告訴,④平成24年12月の公益通報」があることを念頭にお読みいただければと思います。

2 補助金問題
Mさんが,初めに学園で「おかしい」と思う出来事に出会ったのは,平成14~16年頃のことでした。当時の学生から,コンピューターの授業の担当とされているK教授を授業で見たことがないという話を聴いたのです。授業は,代わりに助手が一人で行っているようでした。教授が授業を行っていないとすれば,文部科学省から補助金をうける要件を満たさなくなります。Mさんは,当時,学内の教務委員として,補助金申請の元となる資料を作成する仕事をしており,自分のしていることが補助金の不正受給につながっているのではないかとの不安を抱きました。しかし,親族経営の色が濃い学園内で,理事長の親族であるK教授を糾弾することは,赴任したばかりのMさんには躊躇われました。その後,K教授は,系列の学校に異動となりましたが,この問題はMさんの心の中に燻りつづけていました。
ところが,平成21年に,K教授が再び異動で短大に戻ってくるとの話が持ち上がったのです。Mさんは,二度と疑わしい行為に荷担したくないと思い,担当職員に対して,「K教授が自分で授業をしないのであれば,補助金関係の資料は作成しない」ということを告げました。また,K教授の補助金問題について独自に調査を始めました。
 Mさんの周りの雲行きが怪しくなったのは,この頃からです。あるとき,Mさんは,学園の音楽祭で割り振られた仕事の集合時間に遅刻をしてしまいました。このことを,補助金問題の張本人であるK教授らから多数の教職員の面前で,何度も厳しく叱責されたのです。Mさんの人格を否定するような発言(*「人間のクズ」・・補足)もあり,Mさんはうつ状態となってしまいました。
 Mさんは,上司の叱責をパワハラとして,学内のハラスメント委員会に申し立てました。そして,補助金の問題と音楽祭での過剰な公開叱責は関連しているのではないかと考え,ハラスメント委員会の調査に対して,K教授の補助金不正受給について問題意識を持っている旨の報告をしました。また,平成22年5月には,ハラスメント防止のポスターを学内に掲示するよう依頼する手紙を学園理事長及び短大学長に出しました。


3 強要行為
 決定的な出来事が起きたのは,理事長と学長に手紙を出した「直後」です。ある日,Mさんの研究室を「学園の危機管理担当」を名乗る男性(O氏)が突然訪ねてきました。Mさんと全く面識のないその男性は,「元警察官」であることを告げ,「暴力団と,僕の場合は,政治家,あと公務員を専門にやっている人間だもんで。それひとすじでやってきている。いろんな面じゃ顔は利くと思うからね。」などと,政治家や暴力団にコネクションがあることを伝えてきました。また,Mさんがパワハラの問題について,ハラスメント委員会の委員長に何度もメールを送ったことで,委員長が体調を崩したとして,メールを出すことが傷害罪にあたるなどの話をしてきました。Mさんは,元警察官で暴力団ともコネクションがあるという人物から,自らの行為が犯罪になるなどということを告げられ,恐ろしくなると同時に,理事長や学長がO氏を派遣して,自分の行動を押さえ込もうとしていると感じました。
 Mさんは,O氏の行為について,労働局の指導なども通じて,理事長や学長に抗議しましたが,取り合われることはなく,むしろ,O氏の行為を正当視する発言があったり、O氏が昇進するほどでした。
 Mさんが学園に対する不信感をますます強めていくなか,Mさんは,系列の高校の野球部でおきたいじめ事件への対応にもO氏が関係しており,O氏によりいじめ事件が隠蔽されようとした旨の報道に接します。Mさんは,自分だけでなく,ほかにもO氏が関与して強引な解決を迫られた当事者がいることを知って衝撃を受け,学園が組織的な隠ぺい体質を有していると考えるようになりました。

4 刑事告訴
そこで,Mさんは,O氏,理事長及び学長を強要罪で刑事告訴するという行動に出ました。これが後に,「虚偽の告訴である」として懲戒の理由とされたのです。
 Mさんは,検察庁に証拠(O氏との会話の録音)を示した上で,検察事務官との綿密な打ち合わせを経て告訴を行いました。検察事務官も,O氏との会話内容を把握した上で,積極的に告訴状の書き方などをアドバイスしてくれましたので,Mさんは,よもやこれが虚偽告訴の誹りをうけることとなろうとは思いもしていませんでした。(後半は今後検討)

後半…(危機管理担当の前職とは?その言動やその後の学園の驚くべき対応とは?、理事長らも容認してやっている組織的なもみ消しではないかと内部告発者が考えた理由とは?「労働法律旬報第1894号」2017年8月25日発売)http://www.junposha.com/book/b324649.html


常葉大学短大部補助金問題通報に関する当時の新聞、テレビ報道(抜粋)TBS系列 2013年SBS














教授は授業には出ていないと自ら証言。