2014年3月10日
常葉大学短期大学部准教授・巻口勇一郎
大学オンブズマン理事会
2014年3月5日付けで出された公益通報者である常葉大学短期大学部准教授・巻口勇一郎宛ての学校法人常葉学園・木宮健二理事長からの「公益通報事案について」の書面に関して、以下、声明する。
1)この「公益通報事案について」の書面は、理事長および理事会としての責任(経営責任、任命責任、監督責任、善管注意義務)に全く触れず、現場教職員や部局に責任を転嫁する不当な内容である。少なくとも経営最高責任者としての理事長の謝罪が必要である。今回の不正受給を他人事のように捉えている内容はきわめて不見識である。当該教授が4年間授業をやっていないということを知らなかったでは済まされない。2001年(平成13)度は、4月以降学生に配布されたシラバス・時間割書類の上でも当該教授は授業を担当していない。学園本部がこうした「同族教授」の勤務予定について知らないということなどはあり得ず、知り得べき立場にいたことは確かである。研究業績評価に関する適否も不明であり、少なくとも授業勤務実態のない人物を教授として発令し続けた法人執行部の責任は重い。理事長および理事の責任は重大であると言わざるを得ない。現理事長や理事(特に「同族理事」)の入れ替え、抜本的な執行体制の刷新が不可欠である。
2)この「公益通報事案について」の書面において、「1 調査結果について」と「2 是正措置について」が述べられているが、こうした事態が生じた理由・背景についても調査した公益通報調査委員会報告書の内容を公表すべきである。仮に、常葉学園理事長および理事会が本不正受給について知らなかったとすれば、管理職を含め多くの教職員が、助手が授業を行っていたことを知っていたのであり、それをなぜ多くの教職員が問題視すらしなかったのか、あるいはおかしいと思いながらも言わずに黙っていたのか。この原因は「同族経営」による上意下達の風土、「同族」が多すぎて自由闊達な議論が阻害され、組織の内部監査機能が低下している学園の特殊な環境にある。「同族教授」ははじめから授業をやらないことになっていた、学園側もそうしたことを知って、理解してやっていたという認識であったために、「同族」の特権について敢えて問題視・進言すらしなかった教職員もいる。4年間授業時間になっても事務室から教室へ出講しなかったことに周囲の事務職員も当然気づいていた。「同族」と「非同族」の間のコミュニケーションの不均衡を是正するために、「同族」(やその被推薦者)ばかりが不自然に高い確率で採用され昇進している現状を改め、公平公正な採用・昇進制度を確立し、職場風土の改革に努める必要がある。常葉大学短期大学部では次期事務部長が「同族」であるなど、不正発覚の後にも短期大学部の要職に新たに「同族」が就くなどし、同族教職員の数が増えている。特に、補助金申請に当たる理事長、短大学長と事務部長の全てが「同族」であるという点では、むしろ「同族経営」が「強化」されている。こうした現状から、学園の記者会見に反して、具体的に再発予防策がとられたとは言い難い。
3)書面の「2 是正措置について」において「教育活動及び大学運営に際して、コンプライアンスを着実に実行」すると述べているが、今後、教授会の健全な機能の発揮、透明性が高く適正な教職員人事をはじめとした学内諸手続き等の実現を具体的に進めていくことを求める。
4)常葉大学短期大学部教授会では未だ補助金不正問題の報告がなく、公金不正についての認識が甘く、内部監査機能が発揮されているとは言えない可能性がある。また一部では、授業を担当しなかった当該教授への処分等は全くなく、他方でシラバスにない教員に授業を任せていたとして現場関係者の処分を検討すると報道されている。理事会の経営責任、任命責任、監督責任、善管注意義務を不問とし、現場関係者を懲戒すると言うのは、あまりにも無責任で差別的・前近代的な姿勢と言わざるをえない。
5)今回の公益通報者である常葉大学短期大学部准教授・巻口勇一郎および大学オンブズマンは、学校法人常葉学園公益通報調査委員会の報告書(2013年5月16日付け)で述べられている「財務、人事、労務などの面での透明性の確保が求められている」と「自由闊達に意見交換できる風土の醸成に向けてさらなる取り組みの推進に期待したい」という指摘を受けとめ、その実現に努めていきたい。また、大学オンブズマンは引き続き常葉大学の法人運営・大学運営に対する監視活動を行っていく。
以上
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